▼クラミジア感染症
クラミジアとは、性病・性感染症で、感染報告が現在もっとも多い性病・性感染症です。
クラミジアは球状あるいは卵状の、生きた細胞内でのみ増殖が可能な微生物で、EB(感染性のみを有する基本小体)、RB(代謝活性のみを有する網様体)による、特異な増殖環が特徴です。
クラミジア属は4種に分類されますが、その中でも性病・性感染症の原因となるものはChlamydia trachomatis1種です。
女性のクラミジア感染症は性的交渉により感染し、主に子宮頸管炎を引き起こします。
感染が子宮卵管を経由して腹腔内に侵入すると、卵管炎・卵管周囲炎・卵巣炎・卵管周囲癒着などを発症し、卵管機能障害による不妊症を発症します。さらに骨盤内に広がれば骨盤腹膜炎を発症し、このうち無症状のものを潜在性骨盤腹膜炎と呼びます。
この感染はさらに上腹部に拡散していき、肝臓表面で増殖し、極めて重篤な症状を示す急性肝臓周囲炎を発症します。
一方、妊婦が感染した場合、柔毛膜炎や羊膜炎が誘発され早産・流産の原因になったり、分娩時の産道感染により新生児に結膜炎や肺炎を発症します。
女性のクラミジア感染症は、男性と比較すると症状は軽度ですが、複雑な合併症や後遺症を示します。
またクラミジア感染は性器間のみではなく性器外性行為によっても感染し、オーラルセックスにより咽頭炎、扁桃炎など耳鼻科領域まで感染が波及します。
▼ヘルペス
性器ヘルペスは、性器の単純ヘルペスウイルスherpes simplex virus(HSV)1型または2型の感染症で、外陰部に小水疱、びらんを形成する疾患です。
HSVは感染後、感染部位の末梢神経から進入して、腰仙髄神経節に潜伏感染します。
潜伏感染したHSVは何らかの誘因によって再活性化し、神経を通って粘膜や皮膚に達し、その部位に病変を形成します。
そのため再発がよく見られ、臨床的には初感染初発型、潜伏ウイルスの再活性化による再発型、免疫抑制剤の使用などにより免疫抑制状態になったとき、潜伏ウイルスにより初めて病変が生じる非初感染性初発型(誘発型)に分類されます。
大陰唇や小陰唇から、その周辺にかけて水疱(みずぶくれ)や潰瘍ができると同時に、太もものリンパ節の腫れや痛みがみられます。
そこから子宮の入り口や膀胱にまで感染が広がることがあります。感染が広がると発熱を伴い、排尿時に強い痛みが起こり排尿が困難になることもあります。
所属神経節に潜伏して過労、ストレス、セックスなどの刺激を引き金に発症を繰り返します。女性の方は月経がくるたびに症状が起こりやすくなります。
この病気はキスやクリニングスでも感染してしまい、口から感染したものを口唇ヘルペスと呼びます。
▼淋病
女性の場合は子宮内膜炎、骨盤内感染(卵管炎・卵巣炎・骨盤腹膜炎)腹膜炎・肝周囲炎などを起こし、後遺症として不妊症になることもあります。
また、咽頭炎(口腔性交による)肛門直腸炎(肛門性交による)結膜炎・分娩時の産道感染による新生児の結膜炎も淋菌感染によって起こり、血中に侵入すると、敗血症・心内膜炎・髄膜炎・関節炎などの全身感染症を起こすこともあります。
女性の淋菌の感染好発部位の最初は子宮頸管炎です。淋菌性子宮頸管炎では帯下(おりもの)が主症状であり典型例では粘液性、膿性の分泌物が外子宮口付近に認められます。
しかし感染女性の多くは感染の自覚がないことがほとんどです。
自覚症状が無いために無治療のためにそのまま放置されることが多く、男性の淋菌感染症の感染源になることが多いので注意が必要です。
▼コンジローマ
大小陰唇・膣前庭・膣などにイボができます。イボの形はカリフラワーに例えられることが多いです。
痛みやかゆみ等の自覚症状を伴うことはありませんが炎症を起こしている場合は痛み、かゆみを伴います。
治療が施されれば症状は治まってきますが、コンジローマは再発しやすい病気ですので治療後も経過を観察することを心がけましょう。
物理的療法としては、外科的切除・電気焼灼・凍結療法・レーザー蒸散法があり、薬物的療法に用いられる薬剤としては、5-フルオロウラシル、インターフェロンなどがありますが、保険適用のある有効な薬剤はありません。
▼カンジダ症
膣と外陰部に同時に発症することが多く、外陰部と膣のかゆみ・性交渉時の痛み・排尿障害・炎症・おりものがヨーグルトやチーズ状になる等があります。
性器カンジダ症は風邪や疲労、ストレス、ステロイドや抗生物質の乱用により症状を引き起こすことが多いので、免疫力を下げない努力をするのが予防策となるのでビタミンを取り、体に無理をさせないことが予防につながります。
▼梅毒
梅毒は、その病原体であるトレポネーマの感染により発症します。感染して9週までを第1期梅毒、感染して9週から3年までの第2期梅毒、感染後3年以上の第3期梅毒と区分します。
感染経路は、セックス・アナルセックス・フェラチオなどの性交渉により感染します。皮膚や粘膜の小さな傷から血液に細菌(トレポネーマ)が入り込み体内で細菌が増殖を繰り返し発症します。
▼ケジラミ症
ケジラミは、体長1mm前後のやや茶色がかった白色の吸血性昆虫であるケジラミが寄生することによって発症します。
ケジラミの症状は、激しいかゆみです。激しくかゆみがあるのに湿疹が出ないのが特徴です。下着にケジラミの糞(黒い点々のしみ)がつくことがあります。
また、寝具やタオルなどを介する間接感染もあり、ごくまれに親子の間の感染が生じ、幼乳児の頭髪、まゆ毛、まつ毛に感染がみられることがあります。
シラミ類は宿主選択性が高く人のみに感染し、幼虫成虫雌雄を問わず吸血します。
▼HIV感染症(エイズ)
HIV感染症はその疾患病期により、HIV初感染、慢性感染期、AIDS期に分けられます。大部分のHIV感染者は、発症後10-15年で致死的免疫不全状態すなわちAIDS(後天性免疫不全症候群)に至ります。
HIV感染症の感染経路の基本は性的接触ですが、血液を介した感染も認められます。また通常の日常生活の範囲では感染が成立することはありません。
性交渉による感染成立の頻度は膣性交の場合、男性から女性が0.1-0.2%、女性から男性が0.03-0.09%、肛門性交による男性間が0.1-3%で、またオーラルセックスによる感染は非常に少ないと考えられていますが、可能性は報告されています。